館蔵資料の紹介 2014年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2014年 > 日本新画帖 少年軍團
堤吉兵衛著 青盛堂書店
大正10 (1921)年 縦18.0×横25.7cm
大正に入ると『赤い鳥』に代表される子ども向けの様々な出版物が刊行された。これらは文部省の国定教科書に比べて文章が読みやすく、また挿絵が美しいものもあったので、子どもたちも親しみを覚えたことだろう。
今回は、子ども向けの読み物から『日本新画帖 少年軍團』を紹介する。本書は子ども遊びの「戦争ごっこ」を通して、開戦、戦闘、赤十字の看護の様子、降伏、講和、凱旋といった戦争の事象を説明している。登場するタロウサンとジロウサンの軍隊を南軍、北軍と呼び、北軍の勝利で終わるなど、アメリカの南北戦争をモデルにしている点がおもしろい。奥付によれば、『日本新画帖』シリーズは家庭教育向けにつくられたもので、おもしろおかしく、ためになるように書かれたという。
本書が発行された大正10年は、ワシントン会議が開かれた年である。世界が平和を目指していた時代においても、戦争を題材とした子ども向けの出版物は存在した。こうした出版物を通して、子どもは戦争をどのようにとらえたのだろうか。