館蔵資料の紹介 2013年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2013年 > 第6期国定国語教科書『国語 第六学年 下』「熱情のことば」
文部省 縦20.8×横14.9cm 昭和24(1949)年
NHK大河ドラマ「八重の桜」の影響もあるのか、今、新島八重(1845-1932)ブームがおきている。ドラマの八重は豪傑な女性として描かれているが、第6期国定国語教科書『国語 第六学年 下』掲載の、「熱情のことば」に描かれた八重のイメージとは、少し異なるようだ。
「熱情のことば」は、サケ科魚類“サラマオマス”を命名した動物学者、大島正満(1884-1965)の回顧録であり、正満が幼い頃、八重の夫である同志社英学校の創立者、新島 襄(1843-1890)に可愛がられたエピソードを交えて綴られている。
本ページは、襄が逝った後、八重と正満が彼を追慕している場面である。ここでの八重は涙に目をくもらせながら、亡夫の書斎で正満に優しく思い出を語る貞淑な妻として描かれている。挿絵の八重も、会津戦争で戦った勇ましい八重とは似ても似つかぬ静かな夫人である。この教科書が発行されたのは終戦直後の昭和24年。新しい日本に「武器をもつ女性」はふさわしくなかったのかもしれない。