館蔵資料の紹介 2012年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2012年 > 独立自営大国民
ヅモラン著 慶應義塾訳
東京・金港堂書籍株式会社
縦22.0×横15.4cm
明治35(1902)年
この資料はフランスの教育者、エドモンド・ドモラン(Edmond Demolins,1852-1907)の著書『アングロサクソンの優越性は何に由来するか』(A quoi tient la supériorité des Anglo-Saxons,1897)の翻訳である。
ドモランはこの著作でセシル・レディ(Cecil Reddie,1858-1932)が英国に創設したアボッツホルムの学校を称賛しながら、創造力、強固なる意志、独立自営の気風を養う英国新教育のすばらしさを伝えている。本書で述べられるアボッツホルムの学校や、後にドモラン自身がフランスに創設するロッシュの新学校の教育は新教育運動の源流というべきもので、大正自由教育にも強い影響を与えている。その意味でも本書は、日本の新教育運動の先駆けといえる著作である。
明治35年は日英同盟が締結された年でもある。こうした時代背景からすると、英国教育を称賛した『独立自営大国民』は当時の日本ではインテリ受けしやすい書物であったのかもしれない。なお、表題の著者名がドモランではなく、ヅモランとなっているのは資料の記述に従ったためである。