館蔵資料の紹介 2012年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2012年 > 森に哭(な)く
石丸 寛 画
紙にアクリル絵具
縦62.0×横50.0cm
1983年
蒋 登茂子氏寄贈資料
本学園の卒業生で、指揮者、作曲家として有名な石丸寛の作品である。
石丸は国展に入選するなど優れた美術的感性と技量をもった画家でもあった。その才能を生かして、音楽家として名を成した後にも、絵画作品の制作活動を続けた。石丸にとって、絵を描くことは音楽と同等の自己表現であり、どんなに忙しくても絵画にとりくむときは十分に時間をとるように秘書にスケジュールの調整を依頼した。
この作品は「森に哭く」という題名が示すように、野生の鳥のミステリアスな雰囲気が感じられる。
鳥は石丸の絵画に良く使われるモチーフで、石丸自身も個展の開催にあたって「少年時代から、鳥の愛くるしさと同時に、その奥の不気味さにひかれるところがある」と述べている。特にクチバシの表現の巧みさは、人里離れた森の奥で、一羽の鳥が野生の霊に向かって哭いているかのような印象を受ける。