館蔵資料の紹介 2012年
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宮川春汀作
滑稽堂・秋山武右衛門版
木版色刷
縦37.0×横24.8cm
明治30(1897)年2月
宮川春汀(みやがわ しゅんてい 1873~1914)は、愛知県渥美半島・田原出身の挿絵・風俗画家で、明治20~30年代を中心に活動した。また、柳田國男・島崎藤村らとも親交があった。春汀との縁で伊良子岬を訪ねた柳田が浜辺で漂着した椰子(やし)の実を見つけたという話を聞き、藤村が「椰子の実」の詩作をしたとされる。
春汀は、明治30年前後に少年少女の風俗を描いた版画作品を、多く世に出している。子どもの表情こそ整っているが、服装や道具、近景は写実的に、中景・遠景の背景はぼかして描き、その表現は近世の錦絵と近代の芸術としての版画の間に位置するといえよう。
春汀は明治29(1896)年から翌年にかけて、四季折々の子どもの遊ぶ姿を描く、「小供風俗(こどもふうぞく)」と題する全24枚の作品を制作した。本図は男児2名がたこあげの準備をする姿を描く。時季はおそらく新年であろう。たこの絵柄が日本と清(中国)の兵士が戦う姿なのは、日清戦争の講和条約が結ばれて2年弱という時代を反映したものである。