館蔵資料の紹介 2011年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2011年 > 観想の聖母マリア
カルロ・ドルチの工房
キャンバスに油彩
126.0×104.0cm
17世紀後半
聖母マリアが憂いに満ちたまなざしでキリストをみつめる本作品は、17世紀後半頃にフィレンツェの宗教画家、カルロ・ドルチの工房で制作されたと言われている。
聖母が生まれてまもないキリストをみつめる構図は「ヴェールの聖母」とも呼ばれ、ドルチの工房で数多く描かれた図像の一つである。ヴェールを持ち上げてキリストの体を示す聖母マリアの動作は、それまで隠されていた神の啓示がキリストの受肉によって人間に知らされたことを示している。
御子をくるむ白いヴェールは、磔刑(たっけい)の後にキリストの体を包む衣とイメージが重なる。聖母の表情はわが子の未来の受難を予見しているようにもみえる。聖母の身にまとう赤い衣服は「慈愛」を表し、青いマントは「天の女王」もしくは「純潔」を示している。聖母子の背後には、キリストの降誕を喜ぶ天使たちが描かれている。