館蔵資料の紹介 2011年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2011年 > 聖母子像
シエナ派・作者不詳
キャンバスに油彩
138.5×97.0cm
15世紀
シエナ派は、13世紀から14世紀にかけて興隆した画派である。フィレンツェ派と同様に、当時のイタリア美術を代表する画派であった。フィレンツェ派の合理的、写実的な造形性に対し、シエナ派は情緒的な装飾性を特徴としている。本作品にはシエナ派独特の様式にビザンティン的伝統の表現様式が加わり、優雅で荘厳な聖像を形成している。聖母マリアが左手で幼児イエスを抱き、幼児は右手をあげて祝福し、左手で聖なる書(あるいは巻物)をもつ図像は、ホディギトリア型の聖母子像と呼ばれる。
なお、本作品ときわめて関係が深いと思われる図像に「ヤスナ・グラの聖母」がある。「ヤスナ・グラの聖母」は、ポーランドのチェンストホーヴァにある14世紀に建造されたヤスナ・グラ修道院に納められている。本作品にもみられる聖母の右頬にある二筋の線をふくめて、構図は酷似している。伝説によると、「ヤスナ・グラの聖母」の傷は、この地が侵略されたときに敵軍につけられたもの、あるいは盗賊が略奪しようとしたときに傷つけられたものと言われている。