館蔵資料の紹介 2011年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2011年 > 伊藤東涯筆蹟
掛軸装
紙本墨書
縦124.0×横26.5cm
江戸時代中期
この句は、『論語』里仁(りじん)第四にある一節である。玉川学園の近辺にも、この句から名前を採った横浜に本店を置くチェーンの書店があり、大方の読者にはお馴染みかと思う。
有名な句であるために、訓や解釈にも様々なものがあるが、「德(とく)は孤(こ)ならず、必(かなら)ず鄰(となり)(隣)あり」と読み下すのが、最も一般的かと思われる。その意味は、「仁義礼智の揃った徳のある優れた人物は、孤独ではない。孤立していてもそれは一時的なもので、村里に隣家があり、人には隣人がいるように、必ず共鳴してくれる仲間、賛同者が現れるものだ」というものであろう。
筆者の伊藤東涯(いとう とうがい)(1670-1736)は、江戸中期に儒学の一派である古義学を興した父・伊藤仁斎(じんさい)のもとに生まれ、京都堀川にある家塾の古義堂を長男として受け継いだ。東涯は生涯野にあって自らの研究を深め著述活動を行うとともに、父の著作を相次いで刊行するなど、家学の振興発展に努めた人生を送った。