館蔵資料の紹介 2010年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2010年 > 朱文公像
田中訥言 画
一幅
絹本淡彩
掛軸装
江戸後期・文化4(1807)年以前
縦98.7×横31.8cm
朱文公(しゅぶんこう)とは、中国・宋代の儒学者朱熹〔朱子〕(しゅき1130−1200)の尊称である。彼の思想・解釈は、後に朱子学として儒学の主流をなし、日本でも江戸幕府が朱子学を導入し、教育普及を図ったことから、江戸時代を通じて大きな影響を与えた。 本像の作者として、田中訥言(たなかとつげん 1767?−1823)の名が記されている。訥言は名古屋の人で、はじめ京都に出て土佐派の絵を学んだが、後に大和絵を志し、復古大和絵の先駆者として京都や名古屋で活躍した。
像の上部には朱子学者で、幕府儒官、昌平坂学問所の教官を務めた柴野栗山(しばのりつざん 1736−1807)による画賛がある。従って肖像の制作年代は記されていないが、栗山の没年である文化4年を下らないものと考えられる。
本資料の表具は、神像用の仕立て方ではないが、元はいずれかの学者か学校が、約600年前の大学者の肖像画を描かせ、一種の神像のように大切にしていた可能性も考えられる。