玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

教育博物館では、近世・近代の日本教育史関係資料を主体とし、広く芸術資料、民俗資料、考古資料、シュヴァイツァー関係資料、玉川学園史及び創立者小原國芳関係資料などを収蔵しております。3万点以上におよぶ資料の中から、月刊誌「全人」にてご紹介した記事を掲載しています。
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館蔵資料の紹介 2010年

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四書集註

四書集註

朱熹集註 杏凡山校正
富山版木方 広徳館蔵版
和装本
木版墨刷
慶応2(1866)年8月15日序
縦25.9×横18.2×厚0.6cm他


富山藩は、幕末の慶応年間に藩校広徳館の学制改革を行い、その際教科書用に四書五経を出版した。本資料は、そのうちの四書に当たるもので、『大学章句』(だいがくしょうく)『中庸章句』(ちゅうようしょうく)各1冊、『論語集註(注)』(ろんごしっちゅう)『孟子集註(注)』(もうししっちゅう)各4冊からなる。

これらは中国・宋の朱熹(しゅき 1130-1200)による注釈に、昌平坂学問所教授の佐藤一斎(さとういっさい 1772-1859)が訓点を付したものを参考とし、富山藩の儒者で広徳館の祭酒(校長)である杏凡山(きょうはんざん 1820-85)が校正して出版したものである。『大学章句』の巻頭に、出版の趣旨を述べた杏凡山による序文が収録されている。

袋綴じの折目にあたる版心に「広徳館蔵版」と刷り込まれ、また、『孟子集註』の末尾には「富山版木方 古川冝衛 荻田永治」とあり、富山藩が自前で出版した教科書である。教育面での四民平等の考えの表れか、藩内の希望者には身分を問わず実費で頒布された。そのため1万部以上が発行され、結果的に本書が全国に流布したとされる。

「全人」2010年2月号(No.736)より

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