館蔵資料の紹介 2009年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2009年 > 突然の喜びの聖母
ロシア・イコン
板・テンペラ
縦26.0×横22.0cm
1800年頃
このイコンは、聖母と罪人との対話が主題となっている。悪事を企てた男が、聖母子像の絵の聖母マリヤに呼びとめられた。聖母は「あなたのような罪深い人たちがくり返し罪をおかして、私の息子をくぎづけにしているのです」と言った。男は「聖母よ、誰がそのようなことをしているのでしょう」と問い返したが、その後深く悔いあらためて、日々神に向かって祈る者になったという出来事の一部があらわされている。
一説によると、この男は盗賊で、盗みに入った場所に掲げられていたイコンの中の聖母から啓示を受け、改心したという話が元になったと言われている。したがって、聖母マリヤのイコンによる奇跡のひとつを画面化したものと言えるが、他のイコンと決定的に違う点は、話し言葉が画面に描かれていることである。
聖母の口元から男に向かって、また男の口元から聖母に向かって、言葉が線状に並べられている。イコンの中でこのような構図はきわめて珍しい。