館蔵資料の紹介 2009年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2009年 > 子供遊とろ合戦
歌川歌重(3代 歌川広重)作
「菱形に善」の版元印
和紙
木版色刷
大判錦絵2枚続
慶応4(1868)年7月
縦34.7×横48.5cm
当館では、子供遊絵という幕末維新期の政権抗争を諷刺した錦絵を30種以上所蔵しており、今回もその中の1点を紹介したい。
土蔵の普請場で子どもたちが興じるのは泥合戦で、雪合戦の雪玉を泥の塊に代えたようなものであろう。戊辰戦争をこの泥合戦に見立てている。左側が朝廷方、右は旧幕府方の諸藩で、着物の柄に地名や藩主の家紋、その地の名産品などが描かれ、それを読み解く楽しさもある。蔵の壁には城と「江戸ッ子」「まけるな」の落書きがあり、作者の歌重をはじめ、徳川家お膝元の江戸市民の多くは、旧幕府方に肩入れしていたことがうかがえる。
本資料は画面の周囲が若干断ち落とされ、中央の継ぎ目で絵柄がうまく接合しない。そのため題名も、本来「どろ合戦」であった可能性が高い。
大いに盛り上がる子どもたちだが、土壁の材料を台無しにされた左官職人や、洗濯をする周囲の大人から、後で大目玉を食ったのではないだろうか。