館蔵資料の紹介 2009年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2009年 > 竜宮糸からくり組上
歌川豊久(うたがわとよひさ)画
綿屋喜兵衛(版元)
和紙
木版色刷 2枚組
25.8×38.1cm・25.8×37.5cm
江戸後期
鈴木三郎助氏寄贈資料
このおもちゃ絵は、讃岐国志度の浦の海女が、竜神に奪われた宝玉を取り戻そうと海に潜り、命と引き換えに宝玉を持ち帰った「竜宮玉取姫」の話を組立絵にしている。竜神から逃げる際、自らの乳房の下を切り裂き、そこに宝玉を隠したという。豊久は、竜宮を背景にして、荒巻く大波に見え隠れする擬人化された魚や蝦たちの群れと、追いかける竜、そして玉を守る海女(玉取姫)を糸からくりによって動かせるように作り上げた。
組立絵とは、少し厚手の紙を裏打ちしたのち、ハサミや小刀で部品を切り抜き、糊をつけて立体的に組み立てる子ども用の錦絵である。
江戸時代の随筆家斎藤月岑(さいとうげっしん)の『武江(ぶこう)年表』に、文化年間(1804-18)に歌川国長や豊久が工夫を凝らして組立絵を多く描いたという文がある。組立絵のようなおもちゃ絵は、もともと切り取って遊ぶものであることから、古いものほど現存する資料が少ない。この〈竜宮糸からくり組上〉は豊久の組立絵として、月岑の記述を裏付ける興味深い資料である。