館蔵資料の紹介 2008年
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作者不詳(3代 歌川広重?)
木版色刷
大判錦絵2枚続
慶応4(1868)年頃
縦35.9×横48.7cm
現在放映中の幕末期のテレビドラマ(注・NHK大河ドラマ「篤姫」)が、例年になく人気だという。本資料は、子ども風俗を示す例として収集したものであるが、実はドラマと同時期の政治軍事情勢が諷刺されている。
着衣の柄が対象の地名・家紋等を示し、手前の樽神輿(みこし)の一団が倒幕勢を表す。担ぎ手の先頭は、薩摩(十文字の轡(くつわ)紋と桜島)と長州(萩)両藩で、その前の神官姿は、有栖川宮熾仁(ありすがわみやたるひと)親王(くもの巣と川)である。菊紋の扇を持つのが、明治天皇か。
見物人が幕府についた側で、会津(名産の蝋燭)、庄内、加賀(梅)と仙台(竹)等の各藩を示す。右上部にはしご柄の腹掛け姿で徳川〔一橋〕慶喜がおり、彼と手をつなぐ若い女性が静寛院宮(せいかんいんのみや)〔和宮〕、もう一人が天璋院(てんしょういん)〔篤姫〕である。慶喜の義理の祖母であり老女に描かれているが、当時実際の天璋院は、慶喜より1歳年長の満31歳であった。
3代広重の作に疑(ぎ)せられるが、作者名や役所の検閲を示す改印(あらためいん)はない。