館蔵資料の紹介 2008年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2008年 > 人君明暗圖説
祐觚(ゆうこ)(那波活所)書
紙本墨書、朱線
掛軸装
寛永14(1637)年7月
縦132.7×横49.3cm
藤原惺窩(ふじわらせいか)の高弟である儒学者の那波活所(なわかつしょ 1595-1648)は、紀伊徳川家初代の徳川頼宣(よりのぶ)に仕え、学問の師の立場でしばしば主君に対して直言してはばからなかった。
あるとき頼宣が罪人で刀の切れ味を自ら試したところ、活所は、人を殺して楽しむのは暴君の所業として、その行為を強く諫(いさ)めた。頼宣はその場では腹を立てたが後に悔いて、活所に「人君明暗圖説(じんめいくんあんずせつ)」を作らせ、朝に夕にこれを見て自らを戒めたという。
この図説は、君主としてとるべきこと、及び戒めるべきことを、経書や史書にあらわれた名君・暗君の事績から各々十か条を対比させている。
明君とは智仁勇を具え、知人、倹約、能慎(のうしん)、避讒(ひざん)、愛人、大度、勤労、聴諫(ちょうかん)、任賢(にんけん)、施済(しさい)の十事に努める者であり、対して暗君とは愚忍怯(きょう)の忘己(ぼうこ)、驕奢(きょうしゃ)、無憚(むたん)、嗜殺(しさつ)、欺狐(きこ)、小黠(しょうかつ)、婬逸、立我(りつが)、疑人、吝嗇(りんしょく)の十事にあたる者としている。 当館ではこの図説と、同じく活所による「廟算図(びょうさんず)」を双幅の形で所蔵している。