館蔵資料の紹介 2007年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2007年 > 格致問答
Johannes Buys著
箕作秋坪(宜信斎)蔵版
和紙に木版墨刷、図版のみ銅版
和装本 2冊 全87丁174頁図版4葉
安政3(1856)年7月
縦23.9×横16.7×厚2.0cm
格致(かくち)とは格物致知、物事を突きつめてその本質を知ることで、近世に導入された西洋の自然科学に対しても、この語が用いられる。本書の原題は“Natuurkundig Schoolboek”といい、オランダのヨハネス・ボイス(1764-1838)の著作で、教師1人と児童2人の問答形式による、大衆向けの物理学・天文学入門書である。本資料は、美作(みまさか)津山の医師・洋学者、箕作秋坪(みつくりしゅうへい 1825-86)の蔵版による翻刻で、本文はすべてオランダ語である。
秋坪は、妻の父箕作阮甫(みつくりげんぽ)や緒方洪庵(おがたこうあん)から蘭学を学び、江戸末期には幕府の蕃所調所(ばんしょしらべしょ)などで翻訳に従事した。明治維新後は明六社の結成に参画し、また国立科学博物館の前身、教育博物館の館長を務めるなど、幕末維新期有数の知識人であった。なお、箕作一族は姻戚を含め綺羅星(きらほし)の如く著名な学者が名を連ね、秋坪の子息も、東大総長・文相となった数学者の菊池大麓など、3人が東大教授になっている。