館蔵資料の紹介 2007年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2007年 > 尾藤二洲筆蹟
絹本墨書
掛軸装
享和3(1803)年頃
縦141.6×横31.5cm
尾藤二洲(びとうじしゅう 1745-1813)は江戸後期の儒学者で、名は孝肇。伊予の廻船業者の子に生まれ、早くから頭脳明晰(めいせき)、幼時の怪我がもとで足が不自由なこともあり、大坂に出て学問を修めた。寛政3(1791)年に昌平坂学問所の教授となり、異学の禁後の幕府の朱子学教育を担い、寛政の三博士の一人に数えられる。
この書は、明道先生と呼ばれた中国北宋の著名な儒学者、程顥(ていこう 1032-85)の七言律詩『秋日偶成』の頷聨(がんれん)で、「万物静観皆自得 四時佳興与人同(万物静観すれば皆自得す 四時の佳興(かきょう)人と同じ)」とある。世の中の全てのものを静かに眺めると皆自らの所を得ているようであり、四季の良い趣きも人と同じで味わい深い、という意味である。程顥は、春風駘蕩(たいとう)、温和な人柄で、自然の秩序「理」を直観的に把握することを説いた。弟の程頤(ていい 1033-1107 伊川先生)と共に二程と称され、朱子学の別名「程朱の学」は、この兄弟にちなむものである。