館蔵資料の紹介 2007年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2007年 > 能面「小面」
髙津紘一 作
髙津紘一氏寄贈資料
撮影/斉藤雄致
能楽は、中世に生まれ、近世に洗練され、現代まで600年の歴史を重ねてきた。観阿弥(かんあみ 1333-84)の芸風が子である世阿弥(ぜあみ 1363?-1443?)によって大成されて今日に伝承される日本最古の伝統芸能である。能楽は、2001年に第1回目の選出があったユネスコの世界無形文化遺産に登録され、その芸術性は国際的にも高い評価を得ている。
能面は、能の主体であり核である。能楽が演劇と歌舞の二つの要素の統合によって成り立っているように、能面もまた、写実と抽象の巧みな融合によってストーリーの人物像を象徴的に表現する。
「小面(こおもて)」は数多い女面(おんなめん)の中でも、成立の早い代表的な面である。うら若い早乙女の華麗にして端正な表情を備え、中世の美しさをもっとも秘めている。女性がシテ(主人公)となる三番目物(さんばんめもの)に幅広く用いられ、『古今和歌集』と『源氏物語』に題材をとった演目である「松風(まつかぜ)」でシテが用いるのをはじめ、「野宮(ののみや)」「半蔀(はじとみ)」「井筒(いづつ)」などに用いられる。
このたび能面師・髙津紘一氏より能面が玉川大学教育博物館に寄贈されました。その一つひとつの面を自ら解説いただき、紹介します。