館蔵資料の紹介 2006年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2006年 > 孝経 断簡
紙本墨書
掛軸装
鎌倉時代?
縦28.4×横17.8cm
儒教の基礎的経書である『孝経(こうきょう)』の諸侯(しょこう)章第三は、天子に次ぐ立場である諸侯の心構えを示し、いかに身を律することが、彼らにとっての孝であるかを述べている。
本資料は、鎌倉時代の写本と推定され、元々は巻子(かんす・巻物)であったものの、一部が切り取られた断簡である(入手時には『小学』の断片とされていたが、内容を検討した結果『孝経』とするのが妥当と考えられる)。全76字からなる諸侯章の冒頭31字分を含み、大きい字の本文は、「子曰く、上(かみ)に在りて驕(おご)らざれば、高けれども危ふからず。節を制し度を謹むときは、満ちれども溢(あふ)さず。高けれども危ふからざるは、長く貴きを守る所以(ゆえん)なり。……」とでも読むべきであるか。
文字の周囲には、朱筆でヲコト点が附されている。これは漢文を訓読するための工夫で、点の位置が一定の送り仮名を示す決まりであった。ヲコト点を分析することによって、筆写された当時の訓読法を、復原することも可能であろう。