館蔵資料の紹介 2006年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2006年 > 寺子供幼遊び
作者不詳
大判錦絵2枚続
和紙に木版色刷
明治元(1868)年頃
縦35.9×横48.5cm
江戸時代の寺子屋における学びの様子を描いた絵は、幾つも知られている。そこでは各々が手習いなどに励む場面ばかりでなく、教場内で悪戯(いたずら)や喧嘩(けんか)を繰り広げる姿も残されている。本図も手習いの稽古中、男女に分かれて取っ組み合いの大喧嘩を始めた子供たちの姿を描いている。このように、元気が良過ぎる子供の姿を借りているが、実は女児を幕府側、男児を朝廷側に擬した、幕末期の政権争い、戊辰戦争の諷刺画である。
各人の着物の柄などが判じ物になっており、藩や人物を特定できる。中央の諸肌を脱いだ会津藩と薩摩藩を中心に、幕府・朝廷両派の各藩が争っている。困り顔の師匠の僧侶は上野寛永寺に住した輪王寺宮、彼の右で仲裁を頼む女性は13代将軍家定の正室天璋院(てんしょういん)、左の女性は14代将軍家茂の正室和宮、彼女に抱かれた子どもは明治天皇である。徳川慶喜は、左上隅の机の陰に隠れた姿で描かれている。