館蔵資料の紹介 2006年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2006年 > 日置流弓術免状
紙本墨書 全4巻
1690(元禄3)年9月
17.6×77.0cmほか
加々山五郎右衛門與正より酒多龍右衛門あて
武士の有り様を弓馬の道というが、そもそも弓術は、武士に必須の技術であった。しかし鉄砲が伝来すると、戦闘の方法や道具に大きな変化が生じ、弓矢は飛び道具の第一線の地位から退くことになった。江戸時代になると、弓術は実利的な側面よりも、専ら武士の嗜(たしな)みや、競技、遊技のためのものとしての性格を、次第に強めていった。
本資料は、酒多龍右衛門という人物が、弓術修行の成果を認められて得た免状(印可)である。江戸時代には多くの弓術流派が存在したが、免状の内容からすると、彼が属したのは日置流印西(いんざい)派か、その系統の流派と推定される。免許状のほか、「当家靱箭之次第」「弓之想名之事」「秘歌・掟」という3通の附属文書が伴っており、師から伝授された内容は、技術面の奥義が秘歌(教歌)に一部認められるものの、むしろ秘伝として弓具各部の形状・名称や、その思想的な意義付けに重きが置かれていた。