館蔵資料の紹介 2006年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2006年 > 庭訓往来
紙本墨書 綴葉装
1567(永禄10)年 書写
縦26.5×横17.5×厚0.8cm 62丁
江戸時代の寺子屋等では、往来物と呼ばれる一連のテキストが使用された。往来物とは、後に寺子屋教科書の総称にもなったが、本来は往復書簡形式の文章集のことである。毎月1通ずつ1年間の往復書簡と、単独の書状1通の計25通が収録された『庭訓往来』は、中世までに成立した古往来の中で、最も著名なものといえる。
伝承作者を僧玄慧(げんえ)とするが、事実とはいい難く、実際には14世紀中頃に成立したものと推定される。以後、江戸時代を中心に約500年にわたり全国で出版、使用され続けた。往来物によって読み書きを学び、日常生活における折々の文書作成能力を養ったほか、内容に関連する類語を羅列した箇所があり、体系的な知識の獲得も考慮されていた。
本資料は、1567(永禄10)年11月3日に信州佐久郡野沢(現長野県佐久市)で写したとの奥書があり、筆写本としては比較的古い部類に属するものである。