館蔵資料の紹介 2005年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2005年 > 子供あそび さつきの戯
大判錦絵2枚続
作者不詳(3代歌川広重?)
1868(明治元)年頃発行
縦35.6×横46.8cm
端午(たんご)の節供(せっく)といえば、菖蒲(しょうぶ)がつきものである。これは古来、菖蒲が薬草、転じて魔除けとして用いられたと同時に、音が「尚武」に通じるとして、近世の武家社会に好まれたためでもある。この作品では、子どもたちがふた手に分かれ、菖蒲打ちに興じている。菖蒲打ちとは、菖蒲の葉を三つ編みにして綱状のものをつくり、これを地面に打ちつけて、音の大きさや強さを競った、節供にともなう江戸時代の子どもの遊びである。
本資料は題名の通り、端午の節供に子どもたちが賑(にぎ)やかに遊ぶ姿と思いきや、その実、明治維新の戊辰戦争で、新政府軍と旧幕府軍とが争う様子を示している。前方中央付近が旧幕府側の勢力である奥羽列藩であり、それを取り囲むように新政府側の諸藩が配されている。右前方で対戦中の3人は、着物の柄から会津藩(鐶(わ)つなぎ)と薩摩藩(籠目(かごめ)=かご島)、長州藩(蝶=長)の諷刺であることがわかる。