館蔵資料の紹介 2004年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2004年 > 柄鏡
木瀬浄阿弥作(※弥は本来「方へん」に「尓」)
径20.0×長31.1×厚0.4cm
青銅・漆
江戸時代前期
神奈川県川崎地方で採集
近代になってガラス製のものが導入されるまで、鏡は専ら銅と錫(すず)の合金である青銅で鋳造されたものが使用されていた。鏡面は、丁寧に研磨した後に錫メッキを施すことにより、顔などが映るようにしていた。この種の鏡は本来、化粧や結髪時に柄を持って手鏡として使用することを前提とするが、素手で扱っていると次第に鏡面のメッキに錆が生じてしまううえに、本例のように重量が1.2kgもある大振りのものでは、手軽に扱うというわけにもいかない。おそらく鏡箱に収めた状態で、鏡台にのせて使用したものであろう。
和鏡の背面には、洒落たデザインの精細な文様を施したものが多いが、本例は砂目地に鶴亀・松竹・南天(「難を転ず」意の厄除け)といった吉祥紋を鋳出し、更に表面に暗色の漆を塗ることにより、凸線による文様が浮き立つようになっている。なお、鏡背に銘の入る作者の木瀬浄阿弥(きせじょうあみ)については、江戸時代前期、17世紀の鏡師であるということのほかは、未詳である。