館蔵資料の紹介 2004年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2004年 > 子供遊端午の気生
作者不詳(3代歌川広重?)
大判2枚続
縦35.8×横48.5cm
1868(明治元)年頃発行
本資料は、幕末明治維新期の朝幕関係を諷刺(ふうし)した絵の一つで、1868(慶応4)年2月から4月にかけての江戸城明け渡しの情景を、端午の節供の場面を借りて描いている。向かって右側の庭先には、金魚の飾りを下げた幼い明治天皇(陰で「金」と呼ばれていた)を擁して、親藩ながら朝廷方についた尾張藩(着物の柄が名産の大根)を先頭に、薩摩(篭目=鹿児島)、長州(萩・蝶=長州)等の討幕側の諸藩が並ぶ。右下端の洋酒瓶の大砲は、欧米列強の影響を示すのであろうか。一行を屋内に招き入れ、自らは退去しようとしているのは、15代将軍徳川慶喜(橋=元一橋家当主)と徳川家16代家達(いえさと)(田=田安家出身)、13代将軍正室の天璋(てんしょう)院(天照大神宮のお札)である。物陰から幕府方の会津藩(名産の蝋燭(ろうそく))などが悔しそうに様子を窺っていて、この後に起こる奥羽地方での内戦を予感させる。生臭い政争に取材しているが、諷刺のためたくみに織り込まれた判じ物を読み解く面白さも、味わうことができる。