館蔵資料の紹介 2002年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2002年 > 訓童小学校教導之図
肉亭夏良画
大判錦絵3枚続き
1874(明治7)年
伊勢屋利兵衛板
明治維新後、政府は初等教育の普及に特に力を入れ、早くから小学校の設置を各府県に奨励し、1871(明治4)年に文部省を設け、翌1872(明治5)年8月には教育の根本方針や制度を述べた学制を発した。上掲の『訓童小学校教導之図』は、「学制」発布の2年目に肉亭夏良によって描かれた文明開化期の学校風景である。
「学制」期の学習指導の大きな変革の一つである寺子屋の個別授業から脱却し、一斉授業方式の教室風景が如実に描写され、新しい時代の息吹が生き生きと大教場に満ちていて、近代化の足音が聞こえてくるような授業風景である。
例えば、諸葛信澄が欧米の教授法を研究調査して書いたとされる『小学教師必携』にあるような単語図・連語図を使って、単語や連語を習っている子どもたちや、英語の勉強をしている子どもたちがいる。教師や子どもたちの服装や髪型もさまざまである。全体として子どもたちの学ぶ喜びが教場一杯に満ちあふれていて、学習の原点を示唆してくれる明治の貴重な錦絵である。