館蔵資料の紹介 2002年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2002年 > 深鉢(ふかばち)
東京都町田市本部台遺跡出土
縄文時代中期(勝坂3式)
器高37.8×口径22.2×胴部最大径31.5cm
この深鉢形土器は、東京都町田市の玉川学園構内にある本部台(ほんぶだい)遺跡6号住居址から出土したもので、竪穴住居の廃絶後に土が流入して半ば地中に埋没しかけたところに、土器を投げ込んで廃棄したような状態で発見された。
内彎(ないわん)する無文の口縁部と、算盤(そろばん)玉のように「く」の字に屈曲する胴部をもち、口縁部には、くびれた頸部の眼鏡状把手から連なる1対の立体的な装飾がつけられている。その一方は、目玉の飛び出したカエルがうずくまっているような印象を受け、もう一方は四肢をもつが頭はとぐろを巻いたヘビのようで、両者とも何か得体の知れぬ生き物を思わせる。胴部は上半のみ施文され、粘土紐を貼りつけたレリーフ状の渦巻文を連続して配し、その周囲に渦巻きや三叉状の幾何学的な文様を、沈線で彫刻する手法で施している。本資料は、土器の造形表現が最もダイナミックとなった縄文時代中期中葉の勝坂(かつさか)式に属すが、形態や施文手法からその末期段階のものと考えられる。