館蔵資料の紹介 2001年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2001年 > 文部省第一年報
『文部省第一年報 明治六年』文部省
明治8(1875)年1月
26.0×17.7×2.6cm
『文部省年報』は、毎年の文教行政の概要や教育関係の統計等、文部省の所管事項に関し自ら編纂(へんさん)した公式の年次報告書で、今回紹介するのは、その創刊号の第1年報である。これは明治6(1873)年分の概要をまとめたもので、明治8年1月4日(本書自体には奥付がなく、後出の上奏の日付)に刊行された。
活版で印刷されているが、185丁(370頁)の和装の装訂となっている。内容は冒頭に文部大輔田中不二麿による天皇への上奏文を配し、本文は全国および各大学区・府県ごとの学事、学監の米国人D.モルレー(マレー)の意見具申、各官立学校、図書館、博物館、天文台、海外留学生、教科書編纂事業、出版物の検閲、医薬衛生事務、教育費等に関する概要・沿革・統計等で構成されている。
明治6年といえば、明治4年7月18日の文部省設置、同5年8月3日の「学制」頒布から間がなく、西洋式の近代教育が緒についたばかりの頃で、我が国の学校制度や文教行政が変動しながらも次第に組織化されていった時期に該当する。こうした初期の教育の実態を、この年報からうかがうことができるのである。
なお年報は、書名の文部省の前に「(大)日本帝国」がつけられた時期があった。また報告の対象期間である「年」も、1~12月や7~翌6月の場合もあったが、明治33(1900)年度の第28年報以降、4月から翌3月までとするようになった。内容についても学校制度や文部省組織の変遷等により年ごとの記載事項に異同があったり、統計基準が同一でない点も認められるなど、初期の年報は編集方針が一定せず、収録データを使用する際に注意が必要とされる。
第2次世界大戦後には『学校基本調査報告書』等の詳細な統計書や、現状分析・政策広報を目的とした白書『我が国の文教施策』が発刊され、年報の比重は昔ほどではなくなったものの、明治以来継続刊行されている年報は、近現代教育史研究の上で非常に有効な史資料となり得るのである。
ちなみに現時点での最新の年報は、平成3(1991)年度版の『文部省第119年報』(平成11年・大蔵省印刷局発行)である。
(注・省庁再編により、文部省が文部科学省に改組されたこともあり、平成12(2000)年度の第128年報で終刊となった。)