館蔵資料の紹介 2001年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2001年 > 学習指導要領 一般編(試案)
文部省著作・発行
中学校教科書翻刻発行
昭和22年3月
20.9×14.8cm
初等中等教育の教育課程の細目を定めているのが、学習指導要領である。これは公教育に関する国家的基準としての性格を持ち、学校における教育活動がこれに則って行われているのは勿論、教科書や上級学校の入試問題も、これに依拠して作成されることになる。「総合的な学習の時間」の導入に伴う各種の取り組み、教授内容減少による国民の知的水準や科学技術の将来への不安、近代の戦争・国際関係の評価や表現、入学式や卒業式における国旗・国歌の扱い等、その内容には教育関係者のみならず、広く社会一般の関心が寄せられる。こうした要領には「小学校」「中学校」「高等学校」「盲学校、聾学校及び養護学校」各部と「幼稚園」の学習指導(教育)要領があり、おおむね10年毎に見直され、全部改正が繰り返されている。
今回とりあげたのは、昭和22年3月に出された最初の学習指導要領である。文部省の編纂発行ながら表紙に「(試案)」とあり、これについてはその序論で、「これまでの教師用書のように、一つの動かすことのできない道をきめて、それを示そうとするような目的でつくられたものではない。・・・教科課程をどんなふうにして生かして行くかを教師自身が自分で研究して行く手びきとして書かれたものである。」と述べている。このように、第2次世界大戦後の学校制度及び教育内容の大転換で、新時代の教育を担うことになった教員に指導計画立案の目安として参考に資してもらうことを目的に編纂されたのである。それに対し近時の要領は、名称は同じでもその性格が変化しており、文部省告示の形で示され、法的拘束力を持つものとされている。
なお、現行の要領が学校の種別ごとに編成されているのに対し、当初のものは小学校と中学校を通した形で、一般編とやや遅れて刊行された各教科編の分冊で構成され、現在の学習指導要領と、教科毎の解説を組み合わせたようなスタイルになっていた。当館では、写真に掲げた一般編のほか、社会科(Ⅰ・Ⅱ)、算数科数学科、理科、家庭科、図画工作、音楽、職業科工業の各編を所蔵している。