館蔵資料の紹介 2000年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2000年 > くにのあゆみ
上巻は「日本のあけぼの」から「安土と桃山」
下巻は「江戸幕府」から「大正から昭和」を扱う
第2次世界大戦後、GHQにより超国家主義的教科として、国民学校国史の教授が停止された。その復活のため、昭和21(1946)年9月に文部省が新たに編纂した国定教科書が、『くにのあゆみ』である。肇国(ちょうこく)神話が姿を消し、また軍国的な記述は削除され、歴代天皇の事蹟等は、歴史上不可欠な最小限度にとどめられている。このように「客観的・科学的」な歴史叙述を目指すと同時に、支配者の視点だけでなく、庶民の歴史にも言及するなど、「民主的」な内容も志向していた。こうした教科内容は、国定国史教科書でありながら、明治以来のそれとは大きく異なるものであった。
本書が編纂、発行されたのは、戦後の社会変動期で、教育の民主化や制度改革、日本国憲法の制定といった作業と時期的に併行していた。戦争の反省や、皇国史観からの脱却が不十分との批判もあったが、教科書の内容の民主的な大変換が驚きをもって迎えられた。
昭和22(1947)年に国民学校初等科は小学校になり、同年9月に歴史を包含する教科として社会科が発足し、教科書制度も、民間発行の検定教科書に移行した。そのため、後の教科書に多大な影響を与えたものの、本書自体はほとんど使用されることはなかった。