館蔵資料の紹介 2000年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2000年 > 土偶
これは、東京都町田市清水台(しみずだい)遺跡から出土した、縄文時代中期の土偶である。腰から下を欠くが、板状の胴に広げた両腕と頭部がついている。細い棒を刺した孔で目と口が表現され、胸には乳房が盛り上がっている。側面と背面は沈線で文様が描かれている。現存高3.6cmと小さなもので、完存していても高さ6cm程であったと思われる。
土偶というと、遮光器(しゃこうき)土偶のように歴史の教科書に写真が載る、精巧なものが連想されるであろう。この土偶は、そのイメージからするとやや見劣りがするかもしれない。しかし「絵になる」土偶が作られ、また出土数が増加するようになるのは、主として縄文時代後期以降のことであり、それ以前は本例のような簡単な作りのものが少なくなかったのである。
土偶は人間なのか、神や精霊などの超人的な者の姿をかたどったものなのかがはっきりしない。また作られた目的や用途なども不明である。そのため地母神像や護符、呪具、玩具とする説などが唱えられている。ただほとんどの土偶が女性像であることから、豊穣多産に関連する祭祀的意味合いを持っていた、と考えるのが一般的である。