館蔵資料の紹介 1999年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 1999年 > ルーチョ・フォンタナ作「自然の空間概念」
ブロンズ
45×65×55cm
1959~60年
藤沢武夫氏寄贈資料
このブロンズ作品には二つの穴があいているが、これは金属の塊に穴をあけたものではなく、もとの形をつくった素材は粘土である。穴は粘土を固めて大きな塊をつくり、それに尖った太い棒を深く突き刺したあとである。粘土は型に取られ、さらに蠟を用いて原型をつくったものをブロンズで鋳造して作品としたものである。
作者のフォンタナはもともと彫刻をつくっていたが、それまでの彫刻や絵画の枠を超えた新しい表現を目指し、ミラノで「空間主義」という運動をおこした。これは空間と光に新しい表現を求め、同時に運動、色彩、時間を含めた芸術を創造しようとしたのであった。彼はキャンバスに小さな穴をたくさんあけたり、色ガラスの破片をはりつけたりした作品をつくったが、なかでも切れ目を入れた作品が有名である。これらの作品はそれまで絵の具の基底材としてあったキャンバスを表現媒体に使い、切れ目自体が主役となっている。作品を観る者に空間を意識させることで新鮮な驚きをあたえたのである。このシリーズは「自然の空間概念」というタイトルをもち、同じタイトルで写真のようなブロンズや陶を素材にした作品を残している。