館蔵資料の紹介 1998年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 1998年 > ペン画を描く自画像
片岡京二作
絹に顔料
大正14(1925)年
縦82×横102cm
赤い地に白い花模様のはいったテーブルクロスの上で、ペン画を描いている若い男。その視線は前方に向けられている。テーブルの上には使い古されたカード、インクポット、灰皿にのった吸いかけの煙草とパイプがあり、右手で持ったペンの下にはほぼ完成したと思われるペン画が置かれている。
この自画像の作者片岡京二は明治32年に広島県呉市に生まれた。子どもの頃から描くのが好きであった彼は、明治45年に京都市立美術工芸学校絵画科予科へ入学して、本格的に日本画を学んでいる。大正9年に上京して活動をはじめ、個展、同人展の開催や帝展などへ出品するなどして活躍し、気鋭の若手作家として世の注目を集めた。しかし、束縛の多い画壇やそこに群がる人々に嫌気がさし、画壇を離れてしまう。その後どこにも所属せずに、絵本や児童書などの挿絵を描きながら独自の制作活動を続け、94歳で没した。
当館では晩年に、川崎市麻生区にある柿の実幼稚園の園長小島一也氏のもとに寄託されていた作品7点の寄贈を受け、さらに没後小島氏や友人であった坂本直城氏の尽力で寄贈を受けた関係資料を約320点所蔵する。資料は絵画作品のほかにスケッチ、画材、日記、写真などがあるが、資料の点数が多いのとかなり傷んでいるものがあるため、整理に時間がかかっているのが現状である。できれば早い機会に、彼の追求したものにふれることができる展覧会を企画したいと考え、現在その調査が進められている。