館蔵資料の紹介 1992年
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あずま宮参
橋本周延(1838-1912)
明治29(1896)年
大判錦絵
35.9×23.6cm
日本の伝統的な慣習は、人々が日常生活の中で長い年月を経て体得してきた知識や世界観などによってつくられましたが、今も地方や家庭で大事に伝承されているものが多く、その一つに育児に関するものがあります。親が子の成長を願う思いと、人々が子どもの健全な社会人としての成長を願う思いとが行事という情緒的雰囲気の中で助長され、今日に根づいているものと思われます。
もともと育児に関する行事的慣習は、地方や家庭によって異なりますが、子どもが成長する節目で祝い、その成長を確かめることから始められたもので、生後から順を追っていきますと、まず生後七日目の七夜の祝いがあげられます。それは、ちょうどこの日で産婆や里から来たお手伝いの手を離れ、その無事を祝うものです。現在も行われていますが、この日までに命名して、一つの節目とします。次に、初の外出や氏神参りをし、外出による災いから身を守り、安全を祈ったり、人々に広く認めてもらい、成長を祝福してもらうための行事を行います。また、生後百日(ももか)目に食初(くいぞめ)と称する食べはじめの祝いをします。はじめての食べ物であるため、「ももかの食初め」といって、一粒でも食べさせる真似をし、徐々に食べ物にも慣れさせていきます。更に11月15日に、七五三の祝いがあります。今日に伝わっている七五三の型は江戸時代にでき上がったといわれています。三歳の男女児、五歳の男児、七歳の女児にそれぞれ晴着を着せ、千歳飴を持たせ神社に詣でてお祝いをします。三歳は「三つ子の魂、百迄」というように、子どもの成長の大きな節目であり、五歳児は自立心が芽生える時期であり、七歳(満六歳)は就学の時期であるなど、それぞれに、成長の節目としての意味があり、また祝福を受ける子ども自身が成長に希望とよろこびを感ずるとき、大きな意味があります。
あづま宮参(図版・明治29年)
祖母か、または近親の女性であろうか、赤ん坊を 抱いて赤ん坊を外気からかばうように晴着を掛けて宮参りをしているところです。