館蔵資料の紹介 1992年
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(上)子供遊力くらべ
歌川廣重(三代)
明治元(1868)年
35.8×48.5cm
紙本木版(錦絵)
(下)子供竹馬遊
歌川廣重(三代)
明治元(1868)年
35.8×48.5cm
江戸、明治の錦絵に見る男児の遊びには、いたずらっ子、小心者などが特徴的に描かれ強い者が統率者という男児の世界がよく表され、強さを男の理想とした当時の思想が窺えます。従って、男子の遊びは女子に比べて動的で、屋外遊戯が多く、相撲、けんか、戦争ごっこ、竹馬や竹とんぼ遊び、こま回し、凧あげなど、威勢のよい競争場面が多く描かれています。成長期に養うべき集中力や知力、平衡感覚、体力などが自然のうちに培われたのがよく分かります。なお、ここに掲げた錦絵は戊辰(ぼしん)戦争をこども遊びになぞらえた風刺画で、着物の柄などで政府側と幕府側がわかります。これらは三代廣重の風刺画(4、6月号で紹介の当人の作も同様)ですが、同時に、当時の子どもの姿をよく伝えています。
子供遊力(こどもあそびちから)くらべ(図版)
力くらべが相撲と解されたのは、『古事記』にある建御雷神(たけみかずちのかみ)と建御名方神(たけみなかたのかみ)の力競(勝負で国譲りをした神占)の説話によるとされていますが、一般には『日本書紀』の野見宿祢(のみのすくね)と当麻蹶速(たいまのけはや)との試合が相撲の始まりだといわれています。この絵の賛に「わがままにそだてあげたるわらんべ 礼儀をしらぬ人となりぬる」とあり、礼儀を重んじる相撲ですが子どもの天真爛漫さが面白い。「まけるな うしろには大ぜいついているぜ」「おめへはここへでなさんな ひっこんでいねえわるいようにはしねえよ」などと控えはうるさく、行司は「まだノ\はっけよいナァ」、取り組む二人は「どっこいナァ」「よんやナァ」と掛け声が快い。
子供竹馬遊(こどもたけうまあそび)(図版)
相手を竹馬から落とす遊びで、乱暴者や、竹で打たれて「おっかあえいひつけてやろう」と弱腰の子などが描かれています。竹馬の高さで優越感を味わい、けんかで不満をはらすなど、子どもは子どもらしい感情や活力を調整し成長しました。