玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

教育博物館では、近世・近代の日本教育史関係資料を主体とし、広く芸術資料、民俗資料、考古資料、シュヴァイツァー関係資料、玉川学園史及び創立者小原國芳関係資料などを収蔵しております。3万点以上におよぶ資料の中から、月刊誌「全人」にてご紹介した記事を掲載しています。
全人掲載年

玉川大学教育博物館
〒194-8610
東京都町田市玉川学園6-1-1
Tel:042-739-8656
Fax:042-739-8654
mail:museum@tamagawa.ac.jp

館蔵資料の紹介 1992年

玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 1992年 > 四季と子どもの遊び

子供庭遊の図

小児遊水の争

四季と子どもの遊び

(上) 「子供庭遊の図」 芳晴画
安政2(1855)年
36.2×73.3cm

(下)「小児遊水の争」 雪谷画
明治10(1877)年
34.8×46.9cm


日本人が古くから自然の恵みを冀(こいねが)い、感謝する農耕儀礼によって年中行事を生み出してきたように、日本人の生活は四季の営みと深く係り、生活にリズムと変化をもたらしました。特に子どもの生活は戸外での遊びが多く、四季の自然の変化に応じた楽しみ方をしてきました。江戸時代に描かれた子どもの遊びには、寒空の下では、輪回(わまわ)しや叩きこま、雪が降れば雪あそび、夏場は水鉄砲などの水あそび、小川での沢がにやめだかとり、田んぼではとんぼや蛍狩などがあり、四季をじかに肌で感じとりながら楽しんできました。明治の中、後期になると学校教育が普及し、秋の遠足や運動会のような学校行事が四季の楽しみな生活として加わるようになります。

子供庭遊(こどもにわあそび)の図(江戸期)
魚捕りにはしゃいでいる子や幼い子を肩につかませて背負っている子など、生きいきとした子どもの姿が描かれています。母親達は夏の一ときをつくろいで、楽しげに子守りをしています。

子児遊水(こどもあそびみず)の争(あらそい)(明治初期)
右方の子達が「だれかはやく水をくんでこねへ(え)といけねェぐずぐずしているとまけるぞ」「向ふ(う)は水たしがすくないからこっちはドンドンやつけヨヲ」といえば、左方は「みずやなにかがたんとネへ(え)なんぞといやァがる たんともっているものがあるぞ このとふ(う)りだまけてたまるモンカ」と応酬しています。いかにも子どもらしい、真剣な姿がみられます。江戸期の錦絵にも「水なぶり」(水いたずらの意味)といって同様な遊びがよく描かれています。

自然を相手にした遊びは、子どもにとって、思う存分に満足いくまで打ち込めるため、大人になって、物事を成し遂げる力の助けとなる大切な体験といえます。

「全人」1992年5月号(No.527)より

前の記事を見る  次の記事を見る

玉川大学教育博物館

このページの一番上に戻る