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特色GPシンポジウム
「学士課程教育と一年次教育の役割」 開催報告

テーマ 学士課程教育と一年次教育の役割
開催日 2009(平成21)年1月30日(金)
出席者数

103名

場所 東京ステーションコンファレンス605
主催 玉川大学コア・FYE教育センター

シンポジウムの様子について、ダイジェスト版を公開いたします。
実際の講演(一部を除く)につきましては、DVDにてお分けすることができます。ご希望の方は、玉川大学学士課程教育センター(旧コア・FYE教育センター)までお申込ください(4月末日まで)。DVDの送付は、5月下旬以降となりますので、ご了承ください。

内容

【基調講演】
「一年次教育と学士課程教育の構築」
神戸大学大学教育推進機構 教授 川嶋太津夫

【報告】
「一年次教育から移行教育へ」
玉川大学コア・FYE教育センター センター長
 経営学部国際経営学科 教授 菊池重雄

【事例報告】
1) 『居場所』としてのキャンパスを作る―初年次の学生に大学は何を提供できるか―
慶應義塾大学教養研究センター 所長
 法学部 教授 横山千晶

2) 立教大学における初年次教育の取組
立教大学大学教育開発・支援センター 副センター長
 経営学部国際経営学科 教授 松本茂

3) 授業で身につく『10の底力』―新たなキャリア教育の試み
東京女学館大学 キャリア開発部長
 国際教養学部国際教養学科 准教授 加藤千恵

【総括】
神戸大学大学教育推進機構 教授 川嶋太津夫

開催報告

平成18年度の「文部科学省 特色ある大学教育支援プログラム」に選定していただいて以来、毎年度シンポジウムを開催し、今回で3回目となります。第1回目のテーマは「一年次教育の可能性」でした。昨年度は、1回目の「可能性」を受けて、「一年次教育の展開」というテーマで行いました。そこで、3回目となる今回は「可能性」「展開」を受けて「一年次教育の将来」としたいところでしたが、12月24日に答申「学士課程教育の構築に向けて」が中央教育審議会から出されたことを受け、将来を表現する言葉として「学士課程教育」を使い、「学士課程教育と一年次教育の役割」というテーマで開催いたしました。

最初に基調講演として、神戸大学 大学教育推進機構の川嶋太津夫先生より「一年次教育と学士課程教育の構築」と題してお話いただきました。ご講演は、(1)なぜ「学士課程教育」なのか:その背景、(2)これからの「学士課程教育」の考え方、(3)一(初)年次教育の役割と課題の3部構成で行われました。講演の中で川嶋先生は、高等教育機関への入学状況の推移から学士課程教育のユニバーサル化を確認され、大学全入(=大学全卒)時代と知識基盤社会の到来を関連付けられ、社会の中心的人材は学士であると述べられました。さらに、その中で「学士課程教育」はどうあるべきか、どう変わらねばならないかを、教育パラダイムの転換、学位の国際的通用性、学士力の点から話され、学士課程教育における一年次教育の意義は学士課程教育の基盤にあるとされました。最後に、学士課程教育の構築に向けて必要なこととして、組織、カリキュラム、教授法の3つの観点から、教学マネジメントの改革、カリキュラム・マッピングの必要性、Active Learningの有効性をあげ、ディプロマ、カリキュラム、アドミッションの3つのポリシーとアウトカム評価による教育の質保証について言及されました。

続いて、玉川大学 コア・FYE教育センター センター長 菊池重雄より、本学の一年次教育の今後の展開について報告いたしました。本学で一年次教育科目「一年次セミナー101/102」が開設されて今年度で4年目、つまり、編入生を除く在学生のほぼ全員が大学1年生のときに一年次教育を受けたことになります。また、現在までのところ、学生による授業評価アンケートなどからも一定の成果が認められていますが、1年生で学んだものをいかに2年生、3年生につなげていくかということについてはいまだ課題が残っています。特に、今年度本学で行った全学的な調査から、学業や課外活動の充実度について、大学1年生よりも2年生のほうがポイントが下がっているという結果が出ました。これと同様のことが、近年、米国でも The Sophomore Slump として問題視されています。そこで本学では、2年生の学生が何を望んでいるのかをと分析し、実際とのギャップを埋めるプログラムを展開する二年次教育が必要ではないかと考え、次年度より実験授業を開講することにしました。それは学生が「大学2年生として自覚をもって大学生活を送り、自律した社会人になることを支援する」ことを目的に、学生それぞれが専攻する学問分野を社会や自分とどう関係付けるかを考えていくプログラムです。

休憩を挟んで後半は、慶應義塾大学、立教大学、東京女学館大学の事例報告が行われました。慶應義塾大学教養研究センター センター所長 横山千晶先生からは「『居場所』としてのキャンパスを作る―初年次の学生に大学は何を提供できるか」という題目で報告いただきました。ご報告によれば、学生は安定した居場所ができることで大学生活への不安が解消され、学びに向き合うことができる、ということでした。この「居場所」はキャンパスの中でも外でもよく、必要なのはいろいろな「居場所」をどうつなげるのかということであり、ここでは地域との連携も重要な役割を果たします。その一例として、「三田の家」や「芝の家」の取組を紹介してくださいました。一方、キャンパス内の居場所について、横山先生は、図書館こそが「学び」と「生活」の居場所となるべきとされ、日吉キャンパスの図書館の取組をご紹介くださいました。さらに、時間という空間としての「居場所」として、授業のない期間の取組の重要性についてもふれられ、こういったことは初年次から取り組むことで意識構築ができると述べられました。

立教大学の大学教育開発・支援センター 副センター長 松本茂先生には、「立教大学における初年次教育の取組」についてご報告いただきました。立教大学では、初年次教育についての全学的な取組はないものの、さまざまな教育活動のなかで展開されているとのことで、その内容は、大学への適応、立教大学への適応、専門教育への導入、スタディ・スキル、キャリア・デザイン、補完授業に分けられるとのことでした。今回は松本先生が所属していらっしゃる経営学部の取組の具体的な紹介が中心でした。今後は大学教育開発・支援センターとして、初年次教育プログラムの全学統一の必要性の検討や学部独自の取組の調査および共有化のための仕組みづくり、さらにはより多くの優れた取組を目指した制度作りをしていくとのことでした。

東京女学館大学キャリア開発部長 加藤千恵先生からは「授業で身につく『10の底力』―新たなキャリア教育の試み」として、今年度の「文科省 新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」選定プログラムについて報告いただきました。東京女学館大学では卒業までに身につけるべき10の能力を設定しています。そのうえで、各科目はその授業で伸ばすことのできる能力を2つ提示します。学生はどんな能力を身につけたいかを自分で考え、それに沿った履修をするわけです。これは新しい取組ですが、今後は(1)非常勤講師も含めたFD・SD体制、(2)履修にあたってアドバイザーとキャリアカウンセラーが連携してあたるアドバイザー制度、(3)評価の基準づくりと身につけた能力の妥当性の検証の3つの仕組みを軸に充実を図るとのお話でした。

以上、3大学からの事例報告を受け、質疑応答の後、基調講演をいただいた川嶋先生に総括をいただき、シンポジウムの終了となりました。

シンポジウムの成果
昨年12月24日出された中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」を受け、大学はどうあるべきか、どう変わっていくべきか、また、全入・全卒の時代において教育の質保証、学生の質保証、大学の質保証をいかに守っていくべきかを、それぞれの大学が考えていく必要があります。それはとても難しいことではありますが、今回のシンポジウムは参加者の皆様がこの問題を検討していくうえでの端緒になったのではないかと考えています。
シンポジウムでは本学を含め4つの大学における初年次教育活動の報告を行ないましたが、初年次教育に限らず、大学の教育諸活動は大学によってその内容やスタイルが異なります。それは、すべての教育活動はそれぞれの大学の建学の理念や背景、現在の大学の状況によってなされるものであり、目標が同じであっても目標に達するための道が異なるためです。慶應義塾大学、立教大学、東京女学館大学、玉川大学の取組は一様ではありませんが、高校生を大学生にし、さらに自律した社会人にするという目標は同じです。それぞれの大学の取組の中から参加者の皆さんの大学に適合すると思われる取組に注目されることも、また、それぞれの取組を参考に新たな取組を構築されることも可能です。今回のシンポジウムが参加者の皆さんの大学に相応しい取組に行き着くための一助となれば、幸いです。
また、今回の報告の特徴として、職員の役割が見えてきたということも挙げられます。答申では教職協働ということも謳われています。この点についても、それぞれの大学の報告を参考にすることができると思います。

今後への反映
一つの大学でできる取組には限りがあります。しかし、他大学で行われている取組にも自大学にとってのヒントはたくさんあります。そのことから、初年次教育の情報をより多くの大学が共有し、活用できる場があることが望ましいと考えます。こういった場を本学が提供する、または場の構築の手助けができれば、大変に嬉しいことです。

なお、詳細につきましては、近日中にビデオを公開する予定です。