赤ちゃん研究を実践的に役立てる試みの一つとして、日立製作所との共同研究によってベビートイの開発に関連する調査を行ないました。2010年1月末、その成果が実を結び、赤ちゃんの興味に応じた遊び方が楽しめるベビートイ ベビラボ がバンダイより発売されることになりました。これまで2年間にわたり、ご協力をいただきました赤ちゃんと保護者の方には大変お世話になりました。ありがとうございました。
このたびの共同研究において、赤ちゃんの視覚・聴覚のはたらきに関する月齢ごとの発達変化を科学的手法を用いて検証してきました。具体的には、赤ちゃんに特徴的な2つ性質を利用して検証を行いました。
ひとつめは、赤ちゃんは興味のある絵や音にはより長く注目(注視)・傾聴するという性質です。たとえば右側のスピーカーからは協和音のメロディ、左側のスピーカーからは不協和音のメロディを流すと、5〜6か月の赤ちゃんは協和音の流れてくるほうをよく振り向きます。5〜6か月の赤ちゃんは協和音・不協和音を区別し、協和音に興味を持っていると考えられます。
ふたつめは、赤ちゃんが新しいものを好むという性質です。赤ちゃんは同じものを見続けたり、聞き続けたりすると次第に飽きて視線をそらせたり、音源のほうを振り向かなくなります。しかし、少しでも違うものが見えたり聞こえたりすれば、自然と注意を回復させ、再び見たり聞いたりするようになります。たとえば、赤ちゃんにマス目の荒いチェッカーボードを見せ、飽きた頃にマス目のやや細かいチェッカーボードを見せると、その違いに気づいた赤ちゃんは注視を回復しますが、マス目の違いを区別せず、変化に気付かない赤ちゃんは注視を回復しません。このような赤ちゃんが成長するにつれて見分けられるようになる絵、聞き分けられるようになる音についての知見が、ベビートイの開発に生かされております。検証の内容についてより詳しくお知りになりたい方は、ベビラボホームページにて内容をご覧いただけます。
心理学的・脳科学的知見を利用したおもちゃ開発は、日本初の試みだそうです。このような試みへの協力を通じて、赤ちゃんの見ている・聞いている世界を保護者の方と共有し、赤ちゃんの成長を楽しんでいただくお手伝いができればと考えております。ベビートイ開発への協力は今後も継続していきます。これからも、ご協力のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。