縄文時代には畑でいろいろな作物が作られていました.
このページある植物はほとんど縄文時代の遺跡(いせき=人の住んでいたあと)から「種」や「花粉」として見つかったものです.サトイモだけは想像(そうぞう)ですが,畑をたがやす石器やアジアの他の国との関係から縄文時代前期には作られていたと考えられています.
サトイモはゆでたり,やいたりして食べていました.くさりやすい性質なので発掘で見つかることはありませんが,縄文人達はかなりたくさん作っていたようです.イモが主食だったという学者もいます.
ヒエは江戸時代まで日本人が多く食べていたものです.縄文時代の人もツブツブの小さい実の「から」をとって,おかゆにしたりお団子にして食べていたと考えられています.
アワもヒエと同じように「から」をとって,おかゆやお団子にして食べていたと考えられています.
みなさんがふつうに食べている「おそば」は「そば切り」といって江戸時代に広まったものです.それまではおかゆにしたり,粉にしてからねったり,お団子にして食べていました.縄文人たちも同じようにして食べていたと考えられています,
縄文時代にもイネは作られていました.ただ,今のように水田でたくさん作るようになったのは縄文時代晩期(じょうもんじだいばんき)から弥生時代(やよいじだい)になってからのことです.それまでは畑で作られていました.ですから,とれる量は少なかったようです.そのころのイネは今のイネとちがい,赤米(あかまい)といわれる赤いお米や,黒米(くろまい)とよばれる黒いお米,それに形が細長いのやまるっこいのや,いろいろな種類が混ざりあって(まざりあって)作られていたようです.食べ方はおかゆや粉にしてからお団子にして食べたようです.お米はそのままだと玄米(げんまい)と言って皮がのこっていて,今のようなゆでるようなたき方ではやわらかくなりませんでした.それで蒸して(むす=あつい湯気で料理する方法)たいたと考えられています.
エゴマはゴマのように食べられていました,またその実から油がとれるので江戸時代まで灯油(とうゆ=明かり用の油)として使われていました.縄文時代にも土器で作ったランプのようなものが使われていましたから,もしかしたら灯油としても使われたかもしれません.
もうひとつ大切な使われかたがあります,それは漆器(しっき=うるしぬりのうつわ)を作る時になくてはならないウルシを溶く油なのです.縄文時代の前期には漆塗の技法がありますから,エゴマの油もウルシ塗りのときには使われたと思われます.
また葉っぱもやらかくて食べやすいので,野菜(やさい)としても食べていたと考えられています.
リョクトウは煮豆(にまめ)にしたり,粉にしてお団子にされたようです.中華料理によく使う「はるさめ」もリョクトウから作られますが「めん」のようにして食べたかはわかりません.また昔から「もやし」の原料にもなっていますから,縄文時代の人も「もやし」として食べていたかもしれませんね.
ヒョウタンは食べたのではなく,かわかして中身をとりだしてお酒や油,水などを入れる容器にしました.また,半分にわって「しゃもじ」のように使っていました.
秋は木の実がとれる季節(きせつ)です.長い冬を生活していくために,人々は食べられるものを集めました.森や林には縄文時代の人々が食べる自然の恵み(めぐみ)がたくさんありました.
クリはデンプンが多くしかも「あく」が少ないために,縄文人も沢山食べていたようです.乾燥(かんそう=かわかすこと)によって,長いあいだ貯えておくことができます.また,粉にしてお団子にすることもできます.青森県の三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)で発見されたクリは人間が苗から育てていたことがわかっています.クリ畑があったということですね.
トチはそのままでは「アク」が強くて食べられませんが,皮をむいて灰をまぜた水につけておくとおいしい食べ物になります.縄文時代の遺跡(いせき=人々の住んでいたあと)からは,アクをぬいた加工場が見つかっています.これも粉にしたりお団子にして食べていたと思われています.
クルミは油分の多い木の実です.そのまま貯えていたり油を利用していたと考えられています.小田原の羽根尾遺跡(はねおいせき)では,半分に割られたクルミがたくさん見つかりました.
ドングリにはたくさんの種類がありますが,大部分はアクがあるためトチの実と同じようにアクぬきをしました.それを粉にしてお団子やクッキーのようにして食べたと考えられています.写真のドングリは「マテバシイ」という,アクのないドングリです.
ニワトコの実はお酒の原料になりました.また,葉っぱや枝をにて,湿布(しっぷ)薬にしたと考えられています.今でも漢方薬(かんぽうやく)で,骨折や打ち身のしっぷ薬として使われています.
他にも春には「タラ」や「ウド」「ふきのとう」「ふき」「竹の子」「ギボウシ」などの野草(やそう),秋には「あけび」や「やまぶどう」「さるなし」「またたび」などの木の実もとっていたことでしょう.また,皆さんも夏によく見る「クズ」は,縄文人も根っこから「でんぷん」をとっていたと考えられています.今でもカゼをひいた時に飲む「くず湯」はこのクズの根からとったデンプンをお湯にといたものです.
根からは良質のデンプンがとれます.今では電柱に巻き付いたりしてやっかい者あつかいされていますが,昔は貴重なデンプン粉の原料でした.
サルナシは日本に自生する野生のキウイフルーツです.秋になるとツルに親指のさき程度の実がなります.薄茶色の毛におおわれていて,まるでミニキウイといった感じです.甘酸っぱくてとてもおいしい秋の味覚です.
サルナシと同じく秋の山に実るマタタビは塩漬けや酢漬けなどの漬物にして保存されたと思われます.この実を食べると「元気が出る」と昔からいわれています.