館蔵資料の紹介 2023年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2023年 > 博覧会諸人群集之図 元昌平坂ニ於テ
昇斎一景 画 萬屋孫兵衛 版 木版多色摺 大判三枚続
縦36.0×横72.0㎝ 1872(明治5)年
1872(明治5)年、文部省博物局主催の湯島聖堂博覧会を描いた錦絵で、作者昇斎一景は歌川広重の門人とされる浮世絵師。名古屋城の金鯱(きんしやち)を中央に配し、大成殿内に当時珍しかったガラスケースを並べ、古美術品や動植物の標本などを展示した様子を俯瞰的に描く。会場を埋めつくす観覧者の姿も的確に描き分け、文明開化期の風俗の変化をうつしとる。
湯島聖堂博覧会は、近代化に向け欧米にならった博物館の設置を推進する明治政府が、翌年のウィーン万国博覧会の出品準備を目的に開催。徳川家献納の御物(ぎよぶつ)や全国から集めた古美術品、標本類などが出品された。当初入場者を1日1,000人程度と予想したが、連日3,000人を超えたために入場を制限。会期を1カ月延長し、入場者は15万人にもおよんだ。
昨年創立150周年を迎えた東京国立博物館はこの博覧会をもって創立とし、日本の近代的な博物館はここに歩みをはじめた。本図のような錦絵は博覧会の熱狂を伝え、博物館設置を後押しする役割を果たした。