館蔵資料の紹介 2023年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2023年 > イデア樂譜『月』
田中末廣 詩 梁田貞 作曲
紙 印刷 1929(昭和4)年 再版
縦27.4×横19.8cm
世界の名だたる楽譜に「対抗すべく生れた日本独特の歌謡曲民謡曲」「日本の音楽教育改善」を標榜したイデア書院(玉川大学出版部の前身)の楽譜事業は、イデア楽譜、イデア民謡楽譜、イデア特選楽譜の3本柱、毎月2曲の刊行を計画してスタートし、1928(昭和3)年6月に1部10銭(現在の400円程)で発売された。ちなみに、同時期の月刊『イデア』は1部5銭である。
イデア楽譜第1作目の日本歌曲『月』は、フランス文学に造詣が深い田中末廣(1895‐1 959)が作詞し、「人格音楽家」とも謳われた梁田貞(1885‐1959)が作曲した作品である。田中と梁田は、成城玉川の40年間、小原國芳が理想とする教育、学校を体現するよき友、よき同志であった。
変ロ長調、四七(よな)抜き音階(音階の4番目と7番目の音を抜く)を用いた調べと、月という神秘的な存在が際立った寂寥感の漂う歌詞は、聴く者の心にどこか柔らかな痛みを伴わせるようだ。
表紙下部にあるサインから、元幼稚部部長髙井芳(國芳の妻信の姪)の持ち物であったと推測される。