館蔵資料の紹介 2017年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2017年 > 増補 訓蒙圖彙(ぞうほ きんもうずい)
中村惕斎 木版墨刷 袋綴装 20巻8冊
縦27.0×横19.2×厚1.0cmほか 1668(寛文8)年か
本書は絵入りの百科事典で、見開きを8分割して枠ごとに事物を図示する。図の上部にその名を漢字で大きく書き、音訓の読みを付し、別名や短い解説文を添える体裁をとる。天文(てんぶん)、地理、居処、人物、身体、衣服、宝貨、器用(4巻)、畜獣、禽鳥、龍魚、虫介、米穀、菜蔬(さいしょ)、果蓏(から)、樹竹、花草の全20巻構成で、これに序や目次の1冊が加わる。動植物を扱う巻が多いのは、読者に身近な自然界の知識を得させる目的からといわれる。初版は1666(寛文6)年で、本資料は刊記を欠くが、翌々年刊の増補版とみられる。
著者の中村惕斎(なかむらてきさい)(1629~1702)は京都の呉服商の家に生まれ、幼い頃から頭脳明晰、朱子学を独修して一家をなし、同時代の伊藤仁斎(1627~1705)に比肩する学者とも評された。儒学のほか、天文・地理・度量衡や音律にも通じた、幅広い知識を有した人物であった。 視覚教材としては、チェコのコメニウス(1592~1670)による『世界図絵』(1658年)が教育史上著名であるが、近い時期に日本でも本書のような書物が出版されていたのである。