館蔵資料の紹介 2003年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 2003年 > 筆蹟 四大字 先憂後楽
澤柳政太郎 書
紙本 墨書 扁額 32.7×117.8cm
1920(大正9)年4月
上掲の「先憂後楽」の4大字は、今から85年前に、大正期の新教育運動の指導者・澤柳政太郎(1865~1927)によって揮毫(きごう)された書である。
この書は、北宋の名大臣・范文正公(はんぶんせいこう)の『岳陽樓記(がくようろうき)』にある、「天下万民の憂いに先だちて憂い、天下万民の楽しみに後れて楽しむ」という名言から採られたもので、東京ドームに隣接する水戸徳川家上屋敷の庭園「後楽園」もここから名づけられた。いわゆる先憂後楽の士であるリーダーの節義について訓戒したものである。
この書が揮毫された1920(大正9)年4月は、前年末に成城学園に赴任した小原國芳が日本教育の根本改造を目指し、「教育問題研究会」を発足させ、その機関誌『教育問題研究』を創刊した年として同人たちに記憶されている。
この気品あふれる堂々たる書は、澤柳博士から小原國芳夫妻の雄々しい船出を祝して贈られたものと思われる。