館蔵資料の紹介 1999年
玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 1999年 > エットーレ・コルラ作「ユニヴァーサル・フラワー」
鉄
110cm×86cm×54cm
1956年
藤沢武夫氏寄贈資料
鉄で出来たこの作品は、丸い輪がついた円筒形の上部に、渦巻き形と円弧を措く棒材を組み合わせた形からなっている。遠目からはわからないが、作品を間近に見た人は普通の彫刻とは何か違うことに気づくであろう。というのも、作品のパーツが鉄製門扉などの部分を使ったものだからである。
作者のコルラ(1898-1968)は今世紀を代表する彫刻家であるブランクーシのスタジオで働き、彼の影響を受けたが、それ以上に強烈な影響を彼に与えたものは第二次世界大戦で戦禍にあった都市の光景であった。破壊され、機能を失った機械や建造物の姿。以前の姿や動き、音、匂いを錆びの奥に記憶としてとどめた物体とでもいうべき物たちの変わり果てた姿に彫刻の素材を得たのであった。このような日常生活の廃品などを素材として作品にしたものはジャンクアート(廃物芸術)と呼ばれている。ジャンクアートはどちらかというと反社会的、反芸術的なものを目指すか、あるいはティンゲリーのようにキネティックアート(動く芸術)へ向かう傾向があるが、コルラの特徴は廃物を素材として、あくまでも造形的指向を一貫して追求した点にあるといえよう。