玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

教育博物館では、近世・近代の日本教育史関係資料を主体とし、広く芸術資料、民俗資料、考古資料、シュヴァイツァー関係資料、玉川学園史及び創立者小原國芳関係資料などを収蔵しております。3万点以上におよぶ資料の中から、月刊誌「全人」にてご紹介した記事を掲載しています。
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館蔵資料の紹介 1997年

玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 1997年 > 蓑(みの)

蓑(みの)

蓑(みの)

山形県地方採取
昭和
丈110cm
梅本成視氏資料寄贈

(左)表
(右)裏


日本には四季があって、特に農耕に携わる人は暑さや寒さの厳しい気候から身を守りながら仕事をしなければならず、最近は優れた雨具が使用されているが、麻や木綿が栽培される前までは主に仕事着として蓑が作られたと思われる。

蓑の歴史は日本書紀の神代の巻に「蓑」という文字がみられるところから、大変古くから使用されていたことを知ることができる。平安中期になっても太田道灌が鷹狩に出て雨に遇い、蓑を借りようとしたとき若い女性から山吹を差し出され「七重八重花は咲けども……云々」の逸話は有名であるが、当時は雨具として蓑が身分の高い人にも使用されていたことがわかる。

大正時代になっても尋常小学国語読本巻一の教科書に「ハト、マメ、マス、ミノ、カサ、カラカサ」とあり、日常生活に密着した雨具で誰もが知っていた。

蓑の名称や材料は使用目的や地方によって様々であるが、肩から背中を覆う肩蓑を東北地方では「ケラ」、北陸地方では「バンドリ」と呼ぶことが多い。材料には稲の藁や山地に自生する菅(すげ)や藤等を材料とし、棕櫚(しゅろ)の毛は主に装飾用として使用された。

種類は一般的なものとして、背蓑、肩蓑、胴蓑、丸蓑、腰蓑、蓑帽子等の種類があり、本館では両肩から背中を覆う肩蓑と、腰の部分を覆う腰蓑を15点収蔵している。

蓑の内側は着たとき落ちないように両肩に掛ける紐があり、編み方は風通しをよくして蒸れ現象を防ぐために荒い網目に編まれているが、下着を傷めないように丁寧な仕上げとなっている。外側は雨が降っても雨粒となって下に落ち、雨漏りがしないように全体が材料を重ねてふさふさとした編み方や、肩の一部分が荷物を背負うために細かく編まれたものもある。

はたして、内側に雨が通らず厳しい気候から身を守ることが出来るか、体験者がいないので冬と夏に蓑を着て体験してみた。

冬は北風と雪が直接身体に当たらないので保温性は多少あると感じることができるが、とても現在の防寒具にはかなわない。しかし、夏はあの直射日光が遮られて涼しく、夕立のような強い雨でも頭に蓑笠を付けていると雨粒となって下に落ちて内側に雨は滲みてくることはない。また首周りは布をつけると肌を傷めることはなく、通気性がよく汗も吸収される。素材の匂いと着用に抵抗がなければ、むしろ夏は最近の雨具より快適である。

〔参考文献〕『日本史大辞典』平凡社

「全人」1997年5月号(No.587)より

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