Special Lesson by Mr.Amadeus Heutling
at Tamagawa Gakuen November 16th, 2004
ベルリンフィルハーモニーオーケストラのバイオリニスト、アマデウス・ホィトリングさんが、4回目の玉川訪問 をされました。2000 年、2001年には、中学部・高等部のジュニアオーケストラの指導をしていただきましたが、今回 は小学部も含めた小中高の弦楽器奏者に特別レッスンをしてくださいました。また、アマデウスさんは音楽の先生からのリクエストにおこたえくださり、今回は 特別にベルリンフィルの第一トランペット奏者(ガボール・タルコビさん)を11/17にレッスンをしていただくことができました。 アマデウス先生もガボ−ル先生も、玉川をとても気に入ってくださり、次に来日する時にも可能な限り、また玉川に帰ってきたい(「来る」ではなく「帰りた い」と表現されてたので)とおっしゃってました。両日ともチャペルで行われ、美しい音色がチャペル一杯、生徒達、先生方の心一杯に響きました。アマデウス 先生は、花束を受け取られた時に、「大好きな玉川と、今日はチャペルで結婚式をしたような気分でした。」とおっしゃっり、レッスンを受けた生徒達との時間 を特別に喜んでくださいました。以下、当日のスケジュールとレッスンの様子です。
Schedule:
14:40
The Elementary school strings
1. Ensemble Someday my prince come (Disney)
2. Ensemble Havanella from Carmen
3. Solo Lesson
- M. K. A.Vivaldi/Conterto in a-moll
- S. S. W.A.Mozart/Concerto K.219 "TURKISH"
- S. O. W.A.Mozart/Concerto K.216 in G-Dur
- K. K. J.S.Bach Concerto No.1 allegro assai a-moll
4. Q&A
5. Short demonstration16:00
The junior high school strings
Carl Reinecke, Serenade Op.242 The 2nd movement
16:40
The high school strings
W.A. Mozart, Serenade No.13 in G-Dur K.525
"Eine Kleine Nachtmusic"17:30
Mini Concert
- コレッリ 「ラ・フォリア」
- モールナー「日本民謡によるファンタジー」
- クライスラー「ウィーン風小行進曲」
- ブラームス「ハンガリ−舞曲」
レッスンの様子:
生徒達には、「指揮者をよく見ること」、「お互いの音をよく聴くこと」を何度もおしゃっていました。また、1 人1人をとてもよく褒めてくださいます。例えば、「子供はみんな天才だけど、君も天才の1人だね。」、「君もいつか五島みどりさんのようになれるよ。五島 みどりさんは、とても真面目な顔をして演奏するけど、君は笑顔で演奏しているので、とてもいいよ。」など、素敵な言葉で褒めてくださいました。小学生への アドバイスは、具体的でわかりやすく説明されます。例えば、「弓は新幹線のように真直ぐ弾くんだよ。ゆらゆら揺れて脱線しないでね。しっかり線路の上だけ を安定して走らせてください。」、「弓の持ち方は、羽を持っているように軽く、力を入れないで。」などのようにです。
練習をよくしている生徒には、「よく練習しているね。僕の生徒にはもっと練習するように言うけど、君にはお庭 で他の子供達と一緒に楽しくバイオリンを弾くことを勧めるよ。子供にとって子供であることはとても大切だから、時には友達と一緒にお庭で弾いて楽しんでく ださい。」と、それぞれの生徒にあったアドバイスをされました。アマデウス先生は、「音楽も大切ですが、音楽をやっていくためには、他のこともとても大切 です。うまくなるために練習だけでなく、きちんと"人"として、躾や教養、色々な経験も身につけなくてはいい演奏はできません。」とおっしゃっていまし た。 ソロのレッスンでは、ビブラートをゆっくり弾きはじめ、だんだん速く弾くする練習方法を実演しながら指導してくださいました。また、楽譜を見ないで 弾ける生徒には、楽譜を見ないで弾くようおっしゃり、「胸をはって、このチャペルで一番重要な人だと思って弾いてごらんなさい。素敵なレディになったつも りで弾いてごらんなさい。」と、自信を持って弾くことを指導されていました。
ベルリンフィルのメンバーとしての来日は、今回で8回目になりますが、初めて「日本の皆様への友情と尊敬をこ めて」と、日本の民謡をアレンジして作られた曲をデモンストレーションで演奏してくださいました。
レッスン後、音楽の先生方との食事会では、「えてして音楽をやっている生徒は、日本でもヨーロッパでも裕福な 家庭の子供が多いです。しかし、裕福だからといって甘やかして育ててはいけません。甘やかさず、子供が自分の目標のために一生懸命に努力をする力、「ハン グリ−精神」のようなものを育てないと、テクニックばかりの表面的な演奏しかできなくなってしまうのです。だからこそ、音楽だけでなく、きちんとバランス よく教育されることが大切だと思います。」と話され、玉川の先生方と意気投合されていました。
小学部生からの質問:
- 1日にどれくらい練習をしますか?
「まず、しっかり睡眠を取ります。そして、きちんと朝食も食べます。それから、朝のうちに必ず練習をします。練習は時間が長ければ良いというわけではあり ません。どういう練習をどんな風にするかが大切です。量より質なのです。だから、何時間も練習したからといって"良い練習をした"と言うことにはなりませ ん。今でも基本的な練習もきちんとしてますよ。そして、必ず自分の一番苦手な曲から練習をします。だって、急に電話がかかってきたり、出かけなくてはいけ なくなったり、未来は何が怒るかわからないでしょ。だから、一番大変なもの、苦手なことからまず取りかかります。そうしないと、苦手なものがいつまでも苦 手なままになってしまうからです。」
- 何歳からバイオリンを始めましたか?
「僕は、6歳からバイオリンを始めました。でも夏休みは遊びたいのでバイオリンはしませんでした。秋や冬休みにはしましたけど。8歳、9歳、10歳になる につれ、少しづつ練習の量を増やしていきました。」
- 今までで、一番難しかった作品はどんなものですか?
「僕にとっては、パガニ−ニが難しい曲の1つです。なので、必ず練習でもパガニーニのカプリース(奇想曲)をします。」
*カプリースは、いろんな技巧をちりばめた全24曲(80分)のヴァイオリン曲だそうです。
- コンサートの前に緊張しますか?
「10歳の時にコンクールに出た時は、とても緊張しました。今は、緊張することもありますが、緊張することは大好きです。緊張は「チャレンジ」だからで す。チャレンジは、人生にとってとても大切なことだからです。だから、みなさんも緊張に呑み込まれず、それを「今、チャレンジしようとしてるんだ!」と 思ってやってみてください。」
Dear Amadeus sensei (高等部生からのお礼と感想)
It was a special honor for me to have a great chance to learn from you. I played the bass in the high school quartette. When you told us that the bass part sounds good, I was very very happy and felt that what I had done before the lesson really made some improvement. And I got more energy and motivation to work hard. Your comment and advice were very much hitting the point and I was very much touched. Your stroke touches all hair of the bow and the bow moves lively. I enjoyed the atmosphere you created during the lesson. You also mentioned about the group atomosphere created by teamwork, and I felt the European style music. In addition, I was very happy to have a chance to play the Mozart in front of Amadeus sensei who is the member of the Berlin Philharmonic Orchestra. I think such a chance rarely happens in life. I was really really happy to practice with this string ensemble group and thank Amadeus sensei. I would like to continue my music and I always remember this special experience and Amadeus sensei.
Original script:
アマデウス先生のレッスンを受ける事について非常な喜びと幸せを感じました。バスのパートが、よく鳴っていると言われて、練習した成果が実った事に、苦労 の甲斐があった事と、これからも「やるぞ」という気合いが、入りました。そして、アマデウス先生のレッスンは、的を得た事を言って頂いて、とても感動しま した。又、アマデウス先生の弓のストロークは、余す所無く弓の毛を全て使いこなしていて、弓が生き生きとしていました。チェロの僕も、アマデウス先生の レッスンの雰囲気が、とても心地良く感じられました。レッスンでは、全体の雰囲気についても、よく指摘して頂き、ヨーロッパの雰囲気のする音楽であると改 めて思いました。また、モーツァルトの大曲をベルリンフィルの方に見てもらうという人生にまさに一度しかないようなチャンスに恵まれた事も、この自由研究 の弦楽アンサンブルで練習してきて、本当に良かったと、感謝しています。これからも、この経験を生かし、本当の音楽を目指して、頑張ります。
November 16th, it was a very much meaningful day for me. I met Amadeus sensei for the third time, but this time was very special and different from before because I decided to apply music university next year and my goal is to become a professional musician in the future. To become a top professional player, I learned it is not only music but also one has to grow up as a matured person, otherwise you can't touch people's heart through your music. I really thank this great opportunity and I really would like to work hard to achieve my dream.
Original script:
11月16日その日は僕にとってはアマデウス氏とは三度目の対面であったが今年は音大受験を目指しプロの演奏家になる目標を持つ僕にとっては今までよりも 受ける指導の数々が大きな意味を持つこととなった。そこで僕は世界一流のプレーヤーになる為には演奏はもとより人としても大きく成長しなければ人を感動さ せる音は作れないのではないかと改めて感じた。この機会を与えていただいた事に感謝しさらなる夢の実現の為に頑張っていきたいと思います。
It was my second time to learn from Amadeus sensei. I had been practicing the Viola since I was a junior high school student. It was just before the music competition when I first met Amadeus sensei, but it was a whole orchestra lesson. So I was very honored and happy to have a chance of small group lesson. There were only 5 students, so I could learn what I need to practice and what skill I need to acquire. It was a really special experience for me. This time, I also got a chance to experience to become an interpreter! I really thank such special experiences.
Original script:
私がアマデウス先生に教えて頂くのは今回で2回目となりました。私は中学部からの6年間ヴィオラを勉強してきました。初めてアマデウス先生に教えて頂いた のは中学部でのコンクールの練習でした。そこでは部員全員へのレッスンだったので5人という少人数のレッスンは個人的に自分に足りない技術が学べて非常に 大きな体験となりました。また、今回は先生の通訳にも挑戦させて頂くこともできました。このような貴重な体験ができて、本当に感謝しています。
アマデウスさんの履歴:
- 6歳からバイオリンを始める。
- Hannover Music Schoolを卒業後、Boston Conservatory of MusicにてDorothy Delayについて学ぶ。
- "Deutsch Studinstiftung"から奨学金を受ける。 (手書きがよく読めず、スペルは違うかもしれません)
- 1984年より、ベルリン・フィルハーモニーのメンバー
- 1992年より、ベルリンの芸術大学(University of Arts )でバイオリンと室内楽(Chamber music)を教える。
- 2001年、イギリスのバイオリニスト、ナイジェル・ケネディとベルリンフィルとのコンサートで来日。
- World Orchestra "Jennesse Musicales"に参加
- ソロやカルテッドでも活動
また、ベルリン・フィルの有志メンバーと子供や教育に関わる活動(小児病院や障害のある子供の施設訪 問など)にも取り組まれています。アマデウスさんのお名前で検索したら、ベルリン・フィルの仲間と小児病院を訪問して音楽交流しているドイツの記事が見つ かりました。学校訪問、病院訪問、老人ホームの訪問、障害のある方達のホーム訪問など、福祉と教育に精力的に取り組んでいらっしゃいます。「それは、僕達 のコンサートに来られない人達、来たくても来られない人達のためにです。来られない人達には、僕達が行けばいいのです。そうすることで、音楽の楽しさや楽 器についても知ってもらうことができるし、僕達にとっても新しい出逢いにもなります。」と、本当に色々なことに取り組まれています。