第100回 談話会
(2014年12月12日/私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 第11回 講演会)
オキシトシンが社会的情報に対する視線注視パターンに及ぼす影響
藤澤 隆史 氏
(福井大学子どものこころの発達研究センター 特命助教)
今回の若手の会では、福井大学子どものこころの発達研究センターの藤澤隆史先生にご講演いただいた。
内容は、自閉症スペクトラム障害(ASD)がある未就学児とASDがない未就学児を対象に唾液中オキシトシン(sOT)と社会的情報に対する眼球運動の関連を検討した研究のお話であった。
オキシトシンは視床下部で合成され下垂体後葉より分泌されるホルモンであり、これまで女性の出産・育児において重要な働きを持つと考えられてきた。しかし、近年、オキシトシンは男性にも存在することが示され、他者への利他性、信頼、共感性といった向社会性に重要な働きを持つことが明らかになった。
実験では、sOTの測定と社会的情報(人の顔、バイオロジカル・モーション、指さし等)への注視時間との関連を検討した。実験の結果、ASDがない子どもにおいてはsOTが高いほど指さしのターゲットを長くみることが明らかになった。一方で、ASDがある子どもにおいては、強い関連は見られなかった。
当日はオキシトシンと向社会性に関心を持つ研究者が集まり、sOTの測定方法やオキシトシン受容体遺伝子(OXTR)多型が社会性に与える影響についての議論も行った。唾液による測定という子どもへの負荷が少ない方法を用いることで、今後、子どもの向社会性とsOTの関連が明らかになることが期待される。
日時 | 2014年12月12日(金)16:00-18:00 |
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場所 | 玉川大学大学研究室棟B107会議室 |
報告者 | 高岸治人(玉川大学脳科学研究所) |