談話会報告

第94回 談話会
(2014年4月24日/私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 第5回 講演会

健常ラット、およびパーキンソン病モデルラットにおける大脳基底核入力部位、小脳入力部位の視床運動核ニューロンの自発発火様式

中村 公一 氏
(京都大学大学院 医学研究科高次脳形態学)

京都大学大学院医学研究科の中村公一先生に「健常ラット、およびパーキンソン病モデルラットにおける大脳基底核入力部位、小脳入力部位の視床運動核ニューロンの自発発火様式」という演題でご講演をしていただいた。中村先生は、京都大学および英国オックスフォード大学において、ラットの大脳皮質−基底核−視床ループの情報処理機構に関する形態学的手法と生理学的手法を組み合わせた研究を精力的に進めてこられた。

今回の発表では、ラットの視床のうち大脳基底核から抑制性入力を受けるBZ領域(VA核とVM核)および小脳核から興奮性入力を受けるCZ領域(VL核)にある興奮性細胞の性質をジャクスタセルラー記録で綿密に調べたオックスフォード大学での研究の成果を中心に話された。まず、麻酔下の正常ラットでは、BZ細胞、CZ細胞ともに、大脳皮質の徐波(slow oscillations)に対して位相特異的なバースト発火活動が観察された。

次に、6-OHDAを大脳基底核に注入してドーパミン細胞を破壊したパーキンソン病ラットでは、大脳皮質に病的なベータ波(13-30 Hz)が生じており、BZ細胞はこのベータ波に位相特異的に発火するが、CZ細胞はそのような位相特異的発火がみられないことが示された。実際、局所フィールド電位ではBZ領域に限局してベータ波が観察されており、視床にGABAを注入したところ大脳皮質でベータ波が消失した。

以上、中村先生の講演は、これまで研究知見に乏しかった視床の運動核と大脳皮質、大脳基底核、小脳核との出入力関係に注目し、麻酔下(おそらく睡眠中も)やパーキンソン病でみられる大脳全体のオシレーション活動との関連性を明確に説明するものであった。また、英国留学中のエピソードも交え、海外での研究生活の様子を大変興味深く拝聴することができた。英国の食べ物は実は意外とおいしいというコメントが印象的であった。

日時 2014年4月24日(木)17:00-18:30
場所 玉川大学研究・管理棟5階507室
報告者 礒村 宜和(脳科学研究所教授)

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