談話会報告

第89回 談話会 (2013年2月27日/グローバルCOE 第57回 若手の会談話会)

感情的意思決定に伴う脳と身体の機能的相関

大平 英樹 氏(名古屋大学大学院 環境学研究科心理学講座)

名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座教授の大平英樹先生に「感情的意思決定に伴う脳と身体の機能的相関」という演題でご講演をしていただいた。大平先生は脳の働きが身体の内分泌系や免疫系、自律神経系と密接に関わっているという仮説をベースに脳活動(主にPETで計測)と生理指標との間の関係性について様々な実験から検討されている。

今回の発表では、まず確率的な意思決定課題における低不確実条件と高不確実性条件における脳活動部位、血圧、免疫細胞の働きを調べた研究についてご報告いただいた。この研究の結果、このような不確実条件下においての意思決定には眼窩前頭皮質などの脳部位の活動が高まる一方で、高不確実性条件下においては血圧や心拍数が抑制され、さらにNK細胞の増加が抑制されることが分かった。また心拍変動性のHFの値と脳活動の間の相関を調べた所、前部帯状皮質などの活動との間に相関がみられることが分かった。これらの結果から、意思決定課題に伴う認知過程がトップダウンに身体反応を制御していることが示唆された。

さらに逆転学習(ゲームの確率構造が途中で大きく変化する課題)における意思決定の研究についてもご報告していただいた。この実験では、被験者を高HRV(心拍変動性)群と低HRV群の二群に分け、それぞれで解析を行った。その結果、課題の確率的ルールが途中でがらりと変化した際の生理指標が、高HRV群において強く見られることが分かった。

さらに大平先生はエントロピーで定量化される探索行動の度合いと島皮質の活動やアドレナリンの量が相関するというデータもお示しになられた。この話は最新の実験の話であり詳細はまだ書くことはできないが、大変興味深く拝聴することができた。

以上、大平先生の講演全体の印象として、大きな問題設定をもち、着実にその問題を掘り下げていく実験を積み上げているという印象を受けた。講演会とその後の懇親会において先生に様々な話をおうかがいすることができた今回の若手の会は大変有意義であった。

日時 2013年2月27日(水)16:30〜18:00
場所 玉川大学研究・管理棟5階507室
報告者 高橋 英之(グローバルCOE研究員)

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