第85回 談話会 (2012年10月10日/グローバルCOE 第53回 若手の会談話会)
Learning to Simulate Others' Decisions
鈴木 真介 氏
(北海道大学大学院文学研究科・理化学研究所脳科学総合研究センターPD)
学術振興会の研究員であり、カリフォルニア工科大学に留学される予定の鈴木真介さんに「Learning to Simulate Others' Decisions」という演題で研究について発表していただきました。
他者の行動を評価するメカニズムとして、「シミュレーション説」と「理論説」の二つの大きな説が存在しているのですが、脳内に実際にどのように実装されているのか、これまで謎に包まれていました。鈴木さんは、被験者が簡単なギャンブル課題を行なっている際の脳活動と他者のギャンブル課題における行動を予測する課題を行なっている際の脳活動をfMRIにより計測し、それぞれにおける被験者の行動を説明する計算モデルを構築、モデルパラメータと脳活動の相関を調べることにより、他者行為の評価には前頭葉腹側部で「シミュレーション説」的な計算処理が、前頭葉背側部で「理論説」的な計算処理が行われていることを世界で初めて明らかにしました。この研究は、神経科学と計算論が融合した先駆的な研究であり、Neuronと呼ばれる神経科学の分野での最高峰のジャーナルに掲載されたものです。今回の研究会ではこのホットな論文のトピックについて、玉川大学のスタッフから数多くの質問が寄せられ、一つ一つの質問に鈴木さんに丁重に答えてもらうことができたという大変貴重なものでした。
鈴木さんの研究自体のインパクトの大きさ、面白さもさることながら、鈴木さんの誠実な研究の進め方が大変印象的でした。誠実にデータを解析し、調べたい仮説を多くの実験や解析からあぶり出していく鈴木さんの研究の進め方は、非常に参考になり、勉強になるものでした。
留学前の多忙な時期にも関わらず、時間を作って玉川大学に講演をしにきてくださった鈴木さんに心からの謝意を示したいと思います。
日時 | 2012年10月10日(水)15:00〜16:30 |
---|---|
場所 | 玉川大学研究センター棟1階101演習室 |
報告者 | 高橋 英之(玉川大学グローバルCOE研究員) |